2023年3月3日金曜日

初音ミクTRPG「ココロダンジョン」自作シナリオ『限りなく灰色へ』テキスト全文

初音ミクTRPG「ココロダンジョン」のセッション用に自作したシナリオ「限りなく灰色へ」のシナリオテキストを掲載してみる。
シナリオをお探しの方の利用はご自由にどうぞ。
(改変等もご自由に。利用については自己責任でお願いします。あと作者騙りはやめてくださいね)

実際のプレイ時にはフレーズや脅威名に歌詞を引用するが、インターネット上の公開ではNGなのでその点はご容赦いただきたい。



他のシナリオはこちら
http://yualismemo.blogspot.com/2018/07/trpg.html


◆モチーフ曲

 

★ポイントまとめ

「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」を原作とした二次創作シナリオです。NPCとして「東雲絵名」が登場します。原作を知ることでマスタリングが良くなります。(GMとして回すなら、原作「25時、ナイトコードで。メインストーリー」と「満たされないペイルカラー」には最低限目を通しましょう)

・絵を描く人、ひいてはなんらかの創作をする人の「経験・体験→それを活かす」という流れが重要です。何かを創作した経験があると、汲み取れるものの幅がより出るでしょう。

ある有名なゲームをオマージュした演出があります。1996年発売。

 

 



 □導入フェイズ

その頃、「ノイズ」のSNS上で、PCたちの住む街の近くを中心としたオトクイ被害の噂があった。
発生を続けるオトナシにオトダマ使いが救助の対応を続けていたが、
肝心のオトクイを発見するに至らないままいたちごっこの状況が続いているようだ。

情報カード「オトクイの特性」を公開する。

冒険フェイズ中、PCはこの情報カードに対して間奏アクション「調査」を行える。


ある雨上がりの昼過ぎ。
PC(いずれか)が街を歩いている時、向かいから歩いてくる一人の少女がいた。

その少女はおぼつかない足取りで、PCとすれ違う時にふらついてその場に倒れそうになる。
(PCがそれを助けた場合、顔色が悪く目がうつろな状態であることがわかる。
 PCが何かを呼び掛けてもそれに応えない。
 また、オトダマが「少女がオトナシ状態である」ことを教えてくれる)

それ以外のPCのオトダマたちもその場に居合わせ、それぞれにPCを呼びに行くことで
PCたちは合流する。



PCたちが彼女の体に触れ、ココロダンジョンに侵入すると、
そこは薄暗い森の中で、PCたちのそばでオトナシの少女が眠っている。

PCが呼びかけて起こすと、少女はそれに応える。

「……ん……あれ、ここどこ……?
 っていうか、あなたたち、誰なの……?」
「そう、なんだ……見ず知らずの私を助けてくれて、ありがとう」
「……私は『東雲 絵名』。助けてくれてありがとう、(PC)さん」

(PCのオトダマに対して)
「その子、(オトダマ名)だよね? バーチャル・シンガーの」
「もしかして、あなたたちもセカイの……?
 ううん、なんでもない。今のは聞かなかったことにして」

「いつのまにかこんなところにいるのも変だけど、それより……。
 ……私、ここに来る前……どうしてたんだっけ?」
「確か、自分の部屋で絵を描いてて。息抜きに外に出たことだけは覚えてるんだけど……。
 それが何の絵だったのか、どうして絵を描いてたのか……。
 まるでもやがかかったみたいに、思い出せないの」

(PCのオトダマが「オトナシになったことで記憶が混乱しているのかもしれない」ことと、
 「ココロダンジョンを探索して、フレーズを取り戻せば記憶も戻るかも」と教えてくれる)

探索の前に、冒険の準備を行う。
活力の決定、倹約判定、アプリの購入を行う。


◆ココロダンジョンについて

このシナリオの初期タイムは「5+PCの数」。
間奏アクションを行うたびに、タイムを1消費する。
間奏アクションでは「休憩」「術式」「交流」「調査」を行える。
タイムが0になった場合、強制退出が発生する。


このセッション中、NPC「東雲 絵名」に対して交流を行って判定に成功した場合、
絵名を「想い人にする」か「協力者にする」かを選ぶことができる。

想い人にした場合、PCが何らかの判定を行った時、その判定がファンブルしていなければ、
想い人の「東雲 絵名」にストレスを受けることで、絵名がその判定に続けてハーモニーできる。
(ハーモニーする場合のダイス数は「3」)

協力者にした場合、オトダマの介入と同じルールで使用することができる。

 □エリア01「薄暗い森」

いずれかの方向にPCたちが進むと、その先に大きな建物が見えてくる。
それは石造りの建物で、入り口の扉は開いている。
PCたちが中に入ると、エリア02に移動する。

 □エリア02「美術館」

PCたちが足を踏み入れた建物は、左右に長い廊下が続いている。
また、入ってすぐのところに目立つ案内図があった。
「案内図」を公開する。

PCたちは、その案内図によっていずれかの絵の前か、扉の前に移動できる。


 ◆絵(共通)

そこにあったのは、巨大な風景画だった。
一辺が4~5mはあろうかという巨大な油絵で、(雄大な火山)(遠くまで広がる雪原)(謎めいた遺跡)が描かれている。

PCたちが絵を調べる(しばらく何もしなかった場合、絵名がその絵に近付く)と、
その絵に触れた時、絵の表面が波打つようにうねる
その後、触れた人物がその絵に引き込まれていく
(誰か一人が引き込まれた時、残りのPCたちも全員が絵の中に吸い込まれる)

絵に引き込まれた時、対応する絵のエリアに移動する。


 ◆扉(想いのカケラが3つ集まる前)

廊下を進んでいくと、その突き当りに巨大な扉があった。
石造りの丈夫な扉で、PCたちが何か行動を起こしても全く動かない。

扉の表面にはなぜか鍵穴の類が見当たらないが、代わりに丸に近い形のくぼみが3つある。
(PCたちが想いのカケラを1つ以上所持している場合、それがくぼみのひとつにぴったりとはまる)


 ◆扉(想いのカケラが3つ集まった後)

廊下を進んでいくと、その突き当りに巨大な扉があった。
石造りの丈夫な扉で、PCたちが何か行動を起こしても全く動かない。

扉の表面にはなぜか鍵穴の類が見当たらないが、代わりに丸に近い形のくぼみが3つある。
PCたちがくぼみに想いのカケラを3つはめると、扉が音と振動を立てながら開く。

扉の先に進むと、エリア06に移動する。



※以下、エリア03から05は、どの順番で訪れてもよい場所になっている。
 また、各エリアに1つずつ、「想いのカケラ」がある。
 「想いのカケラ」を獲得するたびに、以下の報酬を得た後、エリア01に戻る。
 ・獲得数に対応したフレーズ
 ・フレーズに対応した記憶
 ・獲得したエリアに対応したオトクイの脅威情報


想いのカケラ(1個目)

フレーズ:
見失ってXXXXXアイロニー
気付けなくてXXXXXX

記憶:
自室に駆け込み、乱暴に扉を閉める絵名。
その手には、美術館のフライヤーが握られていた。
(『シブヤアートコンクール』か……。
 でも、賞をもらえたらきっと、みんな認めてくれる)
「私、このコンクールで、絶対に最優秀賞をとってやる」


想いのカケラ(2個目)

フレーズ:
才能なんてないからXXX一生XXXXXXXX
目に映ったXXX青さがXXXX思っていた

記憶:
「どれだけ頑張って描いても、見てもらえなくて……!
 見てもらえても、なんの魅力もないって言われて……!
 それがどれだけつらいかなんて、私が一番わかってる!!
 だって……だって私は……才能なんて……持ってないから……」
絵名は手に持っていた通知書を床に叩きつけた。


想いのカケラ(3個目)

フレーズ:
XXXXXXXXXX虚しさの色
『認めてはくれないの?』

記憶:
俯き、地面を見つめる絵名。その頭上に、誰かの声がかかる。
「誰かに認められたいなら、認められるまで描けばいいじゃない。
 ……どうせ私達は、作り続けなきゃいけないんだから」
「そんなこと、簡単に言わないでよね。
 でも……描いてみるよ。
 ……うまく描けるか、わかんないけどね」






 □エリア03「雄大な火山」

絵に吸い込まれたPCたちは、次の瞬間にはごつごつした岩肌の上に着地していた。
そこは巨大な活火山の中腹で、近くには溶岩が川のように流れている。

セリフサンプル:東雲絵名
「ちょっ、なんなのここ!?
 こんな熱くて危険なとこ、さっさと離れたいんだけど!」

ふと山の上方を見ると、山の頂上にほど近い場所に
時折強く光る何かがあるのが見えた。
(PCたちのオトダマが「あの光からかすかにフレーズの気配がする」ことを教えてくれる)

ただし、ここはところどころに溶岩の流れる過酷な岩山。
登るためには相当な労力を要しそうだ。

  ▼クエスト「火山を登る」
判定:【日常】 必要成功度:3以上

達成:
PCたちは協力して、火山のかなり高くまで登ることに成功する。
下方から見えた光の場所まで来てみると、大きな石のようなものが落ちていた。光はその石(想いのカケラ)から発されていたようだ。

 

対応する脅威:




 □エリア04「遠くまで広がる雪原」

絵に吸い込まれたPCたちは、次の瞬間には冷たい雪の上に着地していた。
どこかの山の中、その斜面や遠くの山々は見渡す限り雪で覆われ、一面の銀世界だった。

セリフサンプル:東雲絵名
「わっ、寒……! 一面の雪景色ね……。
 こんな状況じゃなきゃ、雪遊びも楽しめたでしょうけど」

それから少しして、うっすらと轟音が聞こえてくる。
PCのオトダマが、山の上方を指してPC達に呼びかける。
まだ遠くに見える「白い津波」のようなそれは、巨大な雪崩だった。

  ▼クエスト「雪崩から逃げろ!」
判定:【頭脳】または【霊力】 必要成功度:1以上
※判定に使用した能力値によって展開が変化する

達成:
(頭脳で判定した場合)
PCは思い出す。
「山の中で木々が生えていない斜面は雪崩が頻繁に起きる場所であり、樹木林になっている場所は日頃雪崩が発生していない」ということを。
PCが見渡した景色の中に……樹木林があった。
PCたちが樹木林の中に身を隠すと、雪崩はPC達の遠くを通過していき、……やがて雪原に平穏が戻った。

その後、PCの隣に何かが降ってきて、地面の雪に埋まった。
拾い上げてみるとそれは、不思議な輝きを秘めた大きな石だった。

(霊力で判定した場合)
PCは精神を研ぎ澄ます。
未だ遥か遠くから聴こえてくる轟音の中に……かすかに、別の音があった。
それは静かな中に凛と響く、メロディとリズム。フレーズの気配だ。
PCたちがその気配を追っていくと、……PCたちの死角になっていた場所に、小さな洞穴があった。
中に入ることで、PCたちは雪崩をやり過ごすことに成功する。

その後、PCたちの足元に何かが転がってきて、こつんとぶつかる。
拾い上げてみるとそれは、不思議な輝きを秘めた大きな石(想いのカケラ)だった。

 

対応する脅威:



 □エリア05「謎めいた遺跡」

絵に吸い込まれたPCたちは、次の瞬間には硬い石畳の上に着地していた。
四角く整備された人工的な空間。そこに苔や蔦が絡まり、なんらかの文明の衰退を思わせる。

セリフサンプル:東雲絵名
「ここ、どこなんだろ……。
 何かの遺跡なのかな。人は……いないみたいね」

少しして、物陰から何かの影が姿を表す。
それは小型のオトクイだった。

  ▼クエスト「小型オトクイとの戦闘」
判定:【武勇】 必要成功度:2以上

達成:
オトクイはPCの攻撃を受けて倒れる。
オトクイが消えた場所に、何かが音を立てて落ちた。
それは不思議な輝きを秘めた大きな石(想いのカケラ)だった。

 

対応する脅威:




 □エリア06「小部屋」

PCたちが部屋に足を踏み入れた時、部屋の明かりが灯る。
そこは電灯で照らされた、薄暗く静かな小部屋だった。
部屋の中にはいたるところに絵具や筆や鉛筆が散乱しており、部屋の中央には真っ白なキャンバスがイーゼルに立てかけられている。
絵名は、そのキャンバスがどうにも気になるらしかった。

「……。描け、って言われてるみたいね。
 なんかしゃくだけど、絵描きとしては描かないわけにはいかないわよね」
「でも、何を描いたらいいのかわかんない……。
 この場所でいくつも風景画を見て、体験して……私も、見る人に何かを与える景色が描けたらいいなって、思った」
「……ねえ、(PC)。私、何を描けばいいかな?」

  ▼リクエスト「絵名の描く絵」
(具体的なモチーフをPCが指定できたら達成。
 「絵名の自由に描いたらいい」などのあいまいな回答の場合、未達成となる)

未達成:
絵名はインスピレーションを得ることができなかった。
真っ白なキャンバスを前に、呻き、苦しむだけの時間が過ぎる。
タイムを1減らす。タイムが残っているなら、PCはこのリクエストに再挑戦できる。

達成:
PCの提案を受けた絵名は、少し驚いたように目を見開いた。
「……それ、いいかも。
 ありがとう、(PC)。私、描いてみるね」

そうして絵名は描きはじめる。

(この間、PCたちは間奏アクションを行ってもよい。
 絵名に対して「交流」を行った場合、一度手を止めて応えてくれる)

しばらくのち、絵名は筆を止める。
「……できた。
 今の私に描けるすべて、込められたと思う」
完成した絵には、絵名の解釈する(PCの答えた風景)が描かれていた。

「ここに来て、思った。
 絵って、それ自体がひとつのセカイ(世界)なんだね」
「景色を、想いを、描いて託す。見る人が、そのセカイを見出す。
 ……もし、私の絵にも、それが込められているなら……」

絵名は決意を込め、ゆっくりと、描いた絵に手を伸ばす。
キャンバスに指先が触れた時……絵の表面が波打ち、絵名はその絵の中に吸い込まれていった。
(PCたちが絵に触れた時、フレーズを獲得する。
 後を追って絵に飛び込んだら、エリア07に移動する)

フレーズ:
滲む想いXXXX描いた
XXXX泣いちゃった

記憶:
遠くから、歌声が聞こえる。その歌を、絵名は聴いていた。
「奏の作る歌は、すごく優しくて、胸が痛くなって……。
 この気持ちをどうにかして表現したいって、思えた」
「――絵名、あの歌に、絵をつけてほしい。
 絵名があの歌にどんな絵を付けるのか、見たい」



 □エリア07「絵名の絵の世界」

そこは、絵名が描いた絵の世界。
描いた風景が、確かな現実感をもってそこにあった。

セリフサンプル:東雲絵名
「ここが、私の描いた絵……。
 なんだか不思議な感じ。本当に、私の絵の中に入れるなんて」

(その風景には必ず「水場」が存在する。
 描いた風景と噛み合わない場合であっても、不自然な水たまりなどが必ずある)
PCが水場に対して、他のPCや絵名に「距離を取って伏せる」ことを指示できた場合、情報カードを公開できる。


 (通常考えられる範囲でセッションを行った場合、この時点で未公開の脅威はパラグラフ5のみとなっているよう構成されている。よってその場合、情報カードによってパラグラフ5の脅威が公開できる)



突如として水場から、氷の針がPCたちに向けて飛び出す。
(あらかじめ情報カードが公開されている場合、PCたちはこれを回避できる。
 できなかった場合、ランダムなPC1人は1D6点のダメージを受ける。これ以降、情報カードの公開はできなくなる)

セリフサンプル:オトクイ
「わざわざこんなところまで来てくれるとはね。
 俺を追っていたのか? だとしたらおめでとう。
 俺がそいつのココロのウタを喰らったオトクイってやつさ」

(情報カードを公開していた場合)
「フ。勘の鋭いヤツもいたもんだ。
 ご明察。俺は水の扱いが得意でね。
 この通り……水があればどこでも潜めるし、操れるってわけだ」

セリフサンプル:東雲絵名
「あいつが、私を襲った……?
 ムカつくやつ。絶対ぶん殴ってやるんだから!」

PCたちの準備が整ったら、決戦フェイズに移行する。



 □決戦フェイズ


 □終了フェイズ


PCたちの攻撃を受け、オトクイは倒れる。

セリフサンプル:オトクイ
「……フ。なかなかやるじゃないか……」
「だがな。俺を斃した程度で、何かが変わると思うな。
 そのオトナシは空虚だ。そいつを苦しめているのは他でもない、自分自身だ」
「『それ』を乗り越えない限り……苦しみは終わらねえ。
 せいぜい……その事実にもがくといい」

オトクイは消え、ココロダンジョンが消滅を始める。
絵名は、何かを決めたようにPCに叫ぶ。

「私、描くよ。現実に戻ってから、絶対!
 その絵、きっと(PC)たちも見る日が来る! 来させてみせる!」
「だから待ってて!
 (PC)たちに助けてもらったこと、無駄にしないようにするから!」

現実に帰った絵名が、絵を完成させられるのか。
PCたちは彼女の絵を目にする日が来るのか。
それは、これから先の話だ。




このシナリオをクリアした鏡音レン/鏡音リンが自分のオトダマのPCは、
「限りなく灰色へ」が習得可能になる。


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