2021年11月19日金曜日

初音ミクTRPG「ココロダンジョン」自作シナリオ『ルマ』テキスト全文

初音ミクTRPG「ココロダンジョン」のセッション用に自作したシナリオ「ルマ」のシナリオテキストを掲載してみる。
シナリオをお探しの方の利用はご自由にどうぞ。
(改変等もご自由に。利用については自己責任でお願いします。あと作者騙りはやめてくださいね)

実際のプレイ時にはフレーズや脅威名に歌詞を引用するが、インターネット上の公開ではNGなのでその点はご容赦いただきたい。



他のシナリオはこちら
http://yualismemo.blogspot.com/2018/07/trpg.html


◆モチーフ曲

 

★ポイントまとめ

「普通でない者は淘汰される」学校社会の負の面を軸に据えたシナリオです。

・シナリオ中に残虐な表現があります。マスタリングに自信があればもっと過激にアレンジしてもよいでしょう。

・エンディングのNPCとの問答に、PCのモラル観があらわれるかも。逃げずに向き合いましょう。

 

 

 □導入フェイズ

PCのうちから学生の1名を【友人PC】にし、それ以外を【救出PC】にする。
以下、導入はそれぞれの視点で行う。


【友人PC】
PCは学校の昼休みに、ノイズのSNSであるトピックスを目にする。
それは「学校などを襲撃する集団のオトクイ」とその被害の噂だった。
情報を調べていくうちに、そのオトクイたちによる直近で最後の被害が、自分の通う学校のすぐ近くであることがわかる。PCが調べた情報の一部として、脅威をひとつ公開する。

そんな折、PCの友人であるNPC「七瀬 アカネ(ななせ-)」がいつものように話しかけてくる。

(※PLに「七瀬アカネの性別」について質問された場合、「男子生徒の制服を着ている」ことだけを明かすこと)

補足(この時点ではPLに対しては非公開の情報)
NPC「七瀬アカネ」の性別は女性(身体・自認共に)
ただし、いわゆる「女性らしい服装」をすることに対して嫌悪感を持っており、そのため学校では男子生徒の制服で登校している。
のちの記憶で判明するが、このことによって周囲から浮いており、日常的ないじめを受ける一因になっている。


セリフサンプル:七瀬アカネ
「やあ、【友人PC】。お昼にしようぜ。俺もう腹ペコでさ」
「小難しい顔してどうしたんだ? 何か調べもの?」
(PCが正直に説明した場合)
「へえ。それはまた、物騒なことだね。
 ま、【友人PC】ならひとひねりできるだろ。『オトダマ使い』ってやつだもんな」


【救出PC】
ある平日の昼、いつものように過ごしていたPCたち。
だが突然、周囲の人やモノが、まるで時間が止まったかのように動かなくなる。

オトダマと共に怪しい気配を探り、街を探索したPCたちは、ある学校の前で合流する。
そこはそれなりの規模を持つ学校のはずだったが、なぜか校舎が廃墟へとなり果てていた。
そしてその廃墟一帯こそが、異変の原因となったココロダンジョンの中心であるという。

オトダマたちによれば、その校舎の周辺に多くのオトクイの気配が渦巻いているという。
この街の異変も含め、ここに巣食うオトクイによるものである可能性が高いようだ。

活力の決定、倹約判定、アプリの購入を行う。
(【友人PC】はこの場にいないが、同じタイミングで準備を行う)


◆ココロダンジョンについて

このシナリオの初期タイムは「7」。
間奏アクションを行うたびに、タイムを1消費する。
間奏アクションでは「休憩」「術式」「交流」を行える。
タイムが0になった場合の特殊な処理はなし。

以下、合流するまでは各視点に含まれるPC・NPCのみ行動する。



〔救出組(【救出PC】)〕

 □エリア01「廃墟の校舎」

学校の塀の中は、建物が朽ち果てた廃墟と化していた。
廃墟の中に、僅かに何かの気配が感じられる。
わずかな気配を頼りに廃墟の探索を進めるうち、PCたちは地下へと続く階段を発見する。
その階段にPCが近づくと、突如現れた『獣人型のオトクイ』の群れに囲まれる。
そのオトクイは、ぱっと見は人間に近いが、獣の手足と爪を持っており頭からはイヌ科のような耳が生えている。

セリフサンプル:オトクイたち
「おい、なんで『動けるニンゲン』がいやがる」
「さあな。わかんねえが……俺たちの邪魔なのは確かだろ」
「オトダマも連れているようだしな。こんな奴ら、『ボス』のところまでは行かせられねえ」

その後、オトクイたちはPCたちに襲い掛かってくる。

  ▼クエスト「獣の群れを撃退せよ!」
判定:【武勇】 必要成功度:1以上
※判定はこの場にいるPC全員で行う。ハーモニー不可。
 クエスト自体はいずれかのPCの成功度が必要値以上で成功。

クエストの判定で成功度が1未満だったPC全員は、オトクイの爪によって深い傷を負う。
そのPCに「×点」を1付与する。

(セッション中、「×点」が初めて登場したタイミングで「×点」の説明を行う)

 


いずれかのPCが成功度を達成:
襲い掛かるオトクイたちを退けることに成功する。
オトクイたちが去った後、廃墟に設置されたスピーカーがPCのネイロに反応して動き出す。
スピーカーから流れてくるウタによってフレーズを獲得する。

フレーズ:
壮観なXXX平凡なXXXXございません

記憶:
全身ボロボロになった七瀬アカネに、【友人PC】が肩を貸している。
満身創痍で声すらもろくに出せないアカネだったが、どこか救われたような表情だった。
(……まさか、こうやって助けてくれる人がいるなんて。思わなかったなあ)


PCが階段の先に進んだら、シーンを遷移する。


〔捕縛組(【友人PC】)〕

 □エリア02「牢屋の並ぶ空間」

【友人PC】は、七瀬アカネの呼ぶ声を聞いてゆっくりと目を覚ます。
PCが目を覚ました場所は、暗い牢屋の中だった。
牢屋には扉が付いているが、外から南京錠で鍵がかかっており出ることができない。
牢屋の外、通路を挟んで対面の牢屋にアカネは捕らえられている。

セリフサンプル:七瀬アカネ
「……よかった、気が付いたんだね?」
「俺たち、誰かに捕まってるみたいだ……見ての通りだけど」

外を見渡すと、同じ構造の牢屋が見渡す限りいくつも続いている。
その中には、PCやアカネのクラスメイト達の姿が見える。

……その時、遠くの牢屋から何かの声が聞こえる。
それを聞いたアカネは、急に何かに怯えるように頭を抱える。
PCがそれをよく聞こうと耳を澄ました場合、その声が断片的に聞こえてくる。

聞えてきた声:
「……あの七瀬とかいうやつ、マジでムカつく。普通じゃねえくせに」
「いっつも平気な顔しやがって。気味が悪いよな」
「アイツとつるんでる【友人PC】もさ。何考えてんだか分かりゃしねえよな」
「いい子ぶってんじゃねえよ。どっちもねばいいのにさ」

それを聞いたPCはココロに深い傷を負う。
「×点」を1付与する。


しばらくすると、PCの隣の牢屋の前に『獣人型のオトクイ』が数人集まってきた。
オトクイたちはその牢屋から中にいた人を捕らえ、どこかに強引に連れていく。
(※連れていかれたのは先ほどの記憶に出ていた「アカネをいじめているクラスメイト」の一人。
 【友人PC】が交友が広かったり洞察力の高かったりと、周囲の交友関係を知りうる余地があればPCにもこのことを公開してよい)

「……あいつ、どこに連れていかれるんだろう……」
「そういえば、【友人PC】が起きる前にも、ああやって連れて行かれるやつが何人かいたが」
「……なあ、俺たち大丈夫なのかな。次は俺や【友人PC】が連れていかれるんじゃないか?」
「もしそうなったら、俺たち無事でいられるのか……?」

  ▼リクエスト「もし自分が捕まったらどうする?」

PCが何らかの意思表示をすることができれば、その内容にかかわらず達成となる。
PCのココロに、どこからかかすかにフレーズが聞こえてくる。
PCはフレーズを獲得し、記憶を垣間見る。

フレーズ:
満点なXXXXXX解答もXXXません

記憶:
地面にうずくまるアカネに、クラスメイトたちの蹴りが襲う。
「うぜえんだよ」「いい気になるなよな」「――のくせに」
泥と血の味が混ざって最悪の気分だったが、耐えることしかできなかった。


〔救出組(【救出PC】)〕

 □エリア02「牢屋の並ぶ空間」

廃墟の階段を降りると、そこは暗く、無数の牢屋が並ぶ空間だった。
その中には、学生(【友人PC】の学校に詳しいPCには、それがその学校の生徒だと分かる)が捕らえられている。

牢屋からは、たまに生徒の呪詛や恐怖の声が聞こえてくる。
それ以外に、手掛かりになりそうなものは聞こえてこなかった。
では、別の角度から切り込むしかないだろう。

  ▼クエスト「他とは違う気配を探せ!」
判定:【霊力】 必要成功度:2以上

達成:
PCはオトダマの力を借り、多くの生徒の気配の中に「オトダマ使いの気配」があることに気付く。
気配を追い、その牢屋がある場所に向かうことができる。
⇒以下、合流点へ


〔捕縛組(【友人PC】)〕

 □エリア02「牢屋の並ぶ空間」

ある時突然、PCの前(アカネが捕らえられている牢屋)に『獣人型のオトクイ』が集まってくる。

(PCが聞こうとすれば、オトクイたちが喋っていることが断片的に聞き取れる)
「ボスが呼んでる」
「悪いようにはしねえよ」
「こいつで間違いないんだな?」

その後、アカネのいる牢屋の扉が開けられ、アカネはオトクイたちに囲まれどこかに連れていかれる。
(先ほどまで生徒たちが連れていかれたのと同じ方向)

⇒合流点
それから少し遅れ、オトクイたちが向かった方向と逆方向から【救出PC】が姿を現す。
【友人PC】が捕らえられている牢屋は、外からなら強引に壊すことができる。
救出PCが装備ナンバーなどで壊すことで、【友人PC】が牢屋から脱出できるようになる。


PCたちが合流し、アカネを追って進むと、『獣人型のオトクイ』たちがそれを取り囲む。
「おっと。今はボスたちがお楽しみ中なんだ」
「ここを通すわけにはいかねえなあ。ここで死んでもらうぜ」
「お前ら、他の奴らも呼べるだけ呼んで来い! 総力戦だ!」
オトクイたちが、PCたちに襲い掛かってくる。

  ▼クエスト「オトクイたちとの総力戦」
判定:【武勇】 必要成功度:6以上

達成:
PCたちは、後からやってきた増援も含め、襲い来るオトクイをひとり残らず撃退することに成功する。
PCたちが放ったネイロの力に周囲のスピーカーが反応し、ひとつのウタを紡ぐ。
PCたちはフレーズを獲得する。記憶を垣間見る。脅威をふたつ公開する。

フレーズ:
XX染まんない 「X」XXXX

記憶:
鏡の前に立つ七瀬アカネ。
そこに映る自分の身体を、恨めしく眺める。
「……俺が、こんな体で生まれてこなければ。きっといじめられないで済んだのに」


オトクイたちが立ちふさがっていた先に、重そうな鉄の扉がある。
扉を開けてくぐると、エリア03「ボスの間」に移動できる。


 □エリア03「ボスの間」

その部屋の中は暗く、ほとんど何も見えない状態だった。
唯一、正面奥にふたつの松明が掲げられており、それに挟まれる形で七瀬アカネは柱に縛られていた。
アカネはすっかり恐怖に染まっており、震えているのがわかる。
そのアカネの隣には、人影がひとつ。
暗くてよく見えないが、その人影は少年のような容姿に、獣の手足と耳を持ち、頭に目立つ王冠を載せていた。

セリフサンプル:オトクイ
「こんなところまでよく来たね。ご苦労さま」
「お察しの通り。僕があいつらのボスさ。つまり、この空間を作った元凶も僕ってわけ。どう? イケてるでしょ」

PCたちが部屋の中に足を進めた場合、その足が何かを踏み潰す。
暗闇に目が慣れてきた時……それが人の腸だと分かる。
辺りは血の海で、切り裂かれバラバラになった人間(の肉片)がそこら中に散乱している。
PCの足元に転がっていたは、先ほど【友人PC】とアカネの前で連れていかれた生徒によく似ていた。

見るとオトクイの両腕も、周辺の血の海と同じ色に染まっていた。
オトクイは爪を出し、構える。
「わざわざこんなところまで出向いてもらったんだ。
 僕は人の傷口をエグるのが趣味でねえ。
 君たちにも……そこの肉片と同じになってもらおうかな!」


 □決戦フェイズ


 □終了フェイズ

「……へえ。お前ら、結構やるじゃん」
「お前らのココロのウタ、さぞ……ウマかったろうな……
 それが喰えないのが、残念だぜ……」

オトクイは倒れ、血の海に沈んでいく。

そうしてココロダンジョンは消滅し、PCたちはいつしか元の学校へと戻っていた。
学校は以前と同じように人が往来している。

全てが元通りになったかに見えた現実において、なおもアカネの表情は晴れない。

「俺、あの化け犬のところに連れていかれた時……そこに、俺をいじめてたやつらもいたんだ。
 そしたらあの化け犬、『お前が一番ウマそうだから、後回しだ』って」
「縛られて動けなくなった後、あいつは他のやつをいたぶりだして……
 俺をいじめてたやつらが、ズタズタに切り裂かれていくのを、見てた」
「その時、ちょっとでも……『ざまあみろ』って思っちゃった自分が、怖くて。
 俺は……あんな恐ろしいことを、ココロのどこかで望んでたのかって」

「……俺には、まだ誰かの助けが必要みたいだ」
「君らのような、強い人の助けがさ」

 

 

セッション終了時、PCごとに「受けた×点の数」ひとつにつき経験値10点を得る。

このシナリオをクリアした初音ミクが自分のオトダマのPCは、
「ルマ」が習得可能になる。


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